オーストラリアで発見された「一見かわいい」古代クジラ
科学 7 days ago
オーストラリアの研究者らが、2019年にビクトリア州サーフコーストで発見された極めて良好な状態の頭蓋骨化石に基づき、新種の古代クジラ「Janjucetus dullardi」を発表した。大きな目とイルカのようなサイズで「一見かわいい」と表現される2600万年前の捕食者は、剃刀のように鋭い歯を備え、恐るべきハンターだった。古生物学者エリック・フィッツジェラルドは、この化石が陸生の祖先から現代のヒゲクジラへと至るクジラの海洋適応過程を解明する重要な手がかりになると指摘。
このクジラはマンマロドン科に属し、現生のヒゲクジラの遠縁にあたる小型の先史時代クジラ群だ。同種としては4番目、ビクトリア州では2006年と1939年に続く3例目の発見となる。漸新世の地質学的宝庫であるサーフコーストのジャンジャク層からは数多くの珍しい化石が出土しており、クジラ進化研究の重要地点としての地位を確立している。フィッツジェラルドはこの地域を「風変わりな古代クジラの揺りかご」と表現し、さらなる発見が期待されると語った。
海岸散歩中に頭蓋骨を発見した地元住民ロス・ダラードに因んで命名されたJanjucetus dullardiは、カンガルーと同じく「オーストラリアらしさ」の象徴と評されている。リンネ協会動物学誌に掲載された本研究は、クジラが如何にして海洋支配者となったかのパズルに新たな一片を加えるもの。2023年にペルーで発見された巨大古代クジラに続く今回の発見は、地球の先史時代生態系を理解する上でこうした化石が持つ世界的な重要性を改めて示すものとなった。