量子の反抗:超低温原子が加熱に抵抗
科学 6 days ago
画期的な実験で、科学者たちは10万個のセシウム原子を絶対零度近くまで冷却し、極細のチューブ状に配列した。レーザーパルスで繰り返し「蹴り」を入れたところ、原子は予想に反してバラバラのエネルギーに分散せず、均一な速度を維持した。この熱平衡化への抵抗は、エネルギー吸収が抑制される量子状態を示唆している。
1950年代から理論化されていたこの現象が、これほど詳細に観測されたのは稀だ。研究チームのマヌエレ・ランディーニ氏は、従来の実験では最終的に加熱が起こっていたが、今回の実験設定では新たなパラメーターを探索し、未知の物理現象を発見した可能性があると指摘。この発見は既存の数学モデルに疑問を投げかけており、少数の相互作用する原子を超えた場合の挙動予測が困難であることを浮き彫りにした。
この安定した長寿命状態は量子技術応用の扉を開く可能性があり、センシングや情報記憶の向上に寄与し得る。研究チームは、より太い原子チューブやチューブ間移動を用いた追加実験を計画している。『Science』誌に掲載された本研究は、量子システムとエネルギー動力学の理解を再定義するかもしれない。